日本総合サービス

日本総合サービスで雇用された社員が、請負先の日本政策投資銀行職員の運転手として勤務していた間に、偽装請負の違法行為を指摘、改善を要求後、強制的に異動させられ解雇された事件をきっかけに提訴、非人道的な会社組織と裁判官の不条理な実態を糾弾しこれを公表する。

日本政策投資銀行仙台2

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控 訴 理 由 書

平成29年6月16日
仙台高等裁判所 民事部 御中

控 訴 人 ○○ ○○ 

被控訴人 日本総合サービス株式会社

平成28年(ワ)第616号 地位確認等請求事件

上記当事者間の頭書事件における控訴人の控訴理由は以下のとおりである。



 第2 原判決の法的判断の誤りについて

1 原判決の判断内容
争点1(本件配転命令の有効性)

(1)本件雇用契約において原告と被告との間に就労場所を限定する合意があったものとはみとめられない。(16頁)

(2)「原則として雇用期間満了でもって契約の更改は行わない」と記載されているが、これは労働契約の期間について記載されたものであり(中略)民法の更改ではなく、期間の定めのある労働契約の更新の趣旨であると解される。(16頁)

(3)具体的に署名押印を強制された状況については述べられていない。(17頁)

(4)被告は、委託先である本件銀行からは原告の具体的言動を挙げ(中略)原告を異動させることについて業務上の必要性があるものと認められる。(17,18頁)
  
 争点2(本件雇止めの有効性)

(5)被告の有期雇用契約正職員は、自己都合ないし会社都合で退職した者が多く、定年退職した者は11人中1人だけであるから、被告において、有期労働契約であっても定年まで勤務が継続する状況にあるとはいえず、実質は期間の定めのない雇用契約に類似する実態があるとまでは認められない(20頁)
(6)今野課長の面接において更新が続いていくというと発言がなされたと主張し(中略)更新されたことが原則であるとまで説明されたものと認められない。(19頁)
(7)業務上の必要性によって更新される一方(中略)後任の労働者の雇用契約が更新されるとは限らない。(19頁)
(8)前期認定事実のとおり(中略)本件配転命令によるものであることを裏付ける証拠はない(20頁)
(9)前記のとおり、本件雇用契約は終了しているのであるから、その後の期間における原告の被告に対する賃金請求権は認められない。

 争点3(被告の不法行為の成否)

(10)被告が職場配慮義務を怠り原告をうつ状態にし休職させたことについては、本件配転命令のほか、被告にいかなる義務違反があるのかが具体的に明らかでない(21頁)
(11)被告が平成27年12月25日に(中略)したがって、上記各行為を不法行為とする原告の損害賠償請求は認められない。(21頁)

2 原判決の判断内容が判例・法律に反すること

(1)就労場所限定合意は明示的なものに限らず、黙示的なものによっても成しうる。
労使間に個別的な労働契約が存在するというためには、明示された契約の形式のみによることなく、当該労務供給形態の具体的実態を把握して労使間に事実上の使用従属関係があるかどうか、この使用従属関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思の合致があるかどうかで決まる(大阪高判・平10,2,18)

控訴人が「日本政策投資銀行で勤務することを条件に採用および内定」を受けたことは被控訴人も認めているものであり、明示的に就労場所の限定合意は存する。控訴人の前任者が10年以上、上記就労場所で1度の配転もされず定年退職し、同僚の斉藤氏も3年目でありながら配転されない事実、乙1 に署名する半月前(平成27,4,15)から控訴人は銀行で勤務を開始しているのであり(乙2)、定期異動はない(被告答弁書)状況から黙示的に配転は無いと認識し控訴人は採用に応じたものである。

基本的に同一場所で勤務することは慣行になっているものであり(被控訴人証人尋問の「同じ勤務地で長く勤務している者が多いという証言」)、裁判官は民法第92条による判断をしなければならない。控訴人陳述書(甲14)
 
事件の経緯5行目以下「長期間勤務してもらいたい為、銀行からの要望によって控訴人に連絡を入れた趣旨、同月9日に被控訴人の職員と共に控訴人が銀行にて銀行支店長以下、人事権を持った銀行職員の面接を受け、銀行側の長く勤務してもら②いたい」との説明に対し、被控訴人陳述書(乙14)において、事実と異なる点として挙げておらず、否定もしていないことからも、就労場所の限定合意と長期間勤務のもと控訴人が採用されたのは明らかである。

「就業場所を変更することがある」と記載されていても、人事権の存在は使用者に一定の合理的範囲内で付与するにとどまるものであり、その行使については濫用があってはならず、配転命令権が使用者に絶対的にあるものではない。
最高裁判・直源会相模原南病院事件・平11,6,11)

求人票(甲9)就業場所の欄に銀行の所在地と「転勤の可能性なし」と明示されており控訴人は配転がないものとの認識で採用に応じたものである。雇用期間においても「原則更新」と明示しており、1年間の期間限定の契約とはいえない。求人票記載の労働条件は、当事者間においてこれと異なる合意をするなどの事情がない限り、雇用契約の内容となる(大阪地判・平10,10,30)ことからも当事者間には当初から就業場所の限定合意と雇用継続の合意が存するものである。

(2)「同欄のただし書きや更改を行わない場合の内容を併せてみれば、民法の「更改」ではなく、期間の定めのある労働契約の「更新」の趣旨であると解される(16頁)」とあるが、民法第513条に更改の規定がある以上、民法の「更改」ではないという第1審裁判官の判断は認諾できるものではない。

控訴人は採用の経緯や被控訴人の同一勤務場所での雇用継続を期待させる発言などから 甲4「更改」は民法上の期間満了でもって新たな変更(勤務地)とする契約を結ばないと認識しているものであり、実際、他の車両管理員も同一勤務地で新たな1年契約の更新を繰り返しているのが実情である。

就業規則や求人票に「更新」と記載されており、被控訴人が「更新」と「更改」を区別して使用しているのは明らかである。仮に「更新」と解釈するのならば、「平成21年度以降の入社者からは、雇用契約の雇用期間を業務委託契約の契約期間(1年)に合わせることとし、有期雇用契約正職員の雇用契約とした。以下民間企業についても雇用期間1年の有期雇用契約正職員とした」(被控訴人準備書面3の1,2頁)ことから他の車両管理員も控訴人と同様の地位であり、同様の労働契約であるところ、同僚の斎藤氏(平成21年度以降入社)を含め1年で期間満了による雇用契約が終了した者は控訴人以外存しない。退職理由の「期間満了」とは、有期雇用契約者が最初の雇用期間満了時に更新せずに退職した者をいう(乙12、4頁、注3)ことから初回の更新をせずに退職したものは全体で3名のみであり、控訴人の地位である有期雇用契約正職員は皆無である。

控訴人の前任者が10年以上銀行で勤務した後、定年退職した事実、同僚の斎藤氏が雇用継続され、同一勤務場所で勤務している事実、控訴人の後任者であるS氏が非常勤職員から身分変更され初回更新されている事実からしても更改を更新と同義語とする判断は誤りである。厳密に契約期間が守られているのならば 乙12 の退職理由には期間満了が数多く記載されるべきところその実態は存しない。

(3)控訴人に対する証人尋問で裁判官から具体的に説明を求められたわけでもなく、この判断は意味を成さないものである。 乙3 に署名する以前に配転には応じられない意思を示しており(甲1)、乙3 署名においても人事異動は受け入れることは出来ず、裁判を起こす意思表示をしたことは被控訴人が認めるところ(被控訴人最終準備書面15頁)平成27年12月25日に強制的に配転させられ、それ以降、銀行入室のカードキーを没収されることにより銀行での勤務が不可能となり、平成28年1月4日には席を与えられず(被控訴人に対する反対尋問)署名しなければ仕事を与えられず、拒否すれば懲戒解雇処分にされるという自己の地位についての重大な錯誤があり、この意思表示には 民法第95条 による錯誤が存するものであり 乙3 は無効である。

(4)控訴人の銀行での具体的言動について被控訴人の主張を控訴人は一貫して否認しており、被控訴人に対する反対尋問においても、控訴人にその事実を確認していないことは証明されている。これにより、控訴人の銀行における不適格言動が配転理由になったと認めることはできない。

付帯業務(民法第632条・労働省告示37号の偽装請負)について控訴人は平成27年9月1日に被控訴人に報告し、同月3日に被控訴人が銀行に改善を求めていることから、被控訴人及び銀行は付帯業務が法令違反であることを認識できたものである。「原告は付帯業務を偽装請負であるとは述べておらず(中略)偽装請負を理由とした改善要請では無かった。」(被控訴人準備書面1の16頁)とあるが、付帯業務が偽装請負行為であること、控訴人がそれによって不満を述べていることを被控訴人が知りながら、仙台支店長に報告せず、銀行に対して再度の付帯業務の中止を求めなかったのは被控訴人の債務不履行である。これによって控訴人は直接、銀行に対し改善を要求しなければならず、このことをもって銀行との信頼関係が維持されているとみることは困難であるとの1審裁判官の判断は誤りであり、円滑な業務遂行のために控訴人を異動させることは業務上の必要性があるとの判断は、法を遵守すべき裁判官が偽装請負を黙認することが委託先との信頼関係を維持するものであるという極めて誤った判断をくだしたものである。

配転命令は業務上の必要性がない場合は無効となり、1審裁判官の上記判断は業務上の必要性が存するものと認めることはできない。業務の必要性が存しても、不当な動機や目的によってそれが為された場合は権利の濫用であり無効である。配転は職場内の信義則に基づいて行わなければならず、被控訴人は控訴人の自宅を突然訪ね、銀行入室のカードキーを強制的に回収することで、控訴人を銀行に入室できない状況を作ることによって、銀行での業務に携われないようにし配転を強行したのである。信義則上一定の手続きを取ることが要求され、それを無視して強行された配転命令は権利の濫用に当たる。配転に関し使用者側は労働者側に対し内示や意向聴取を行い配転の内容や必要性を説明するなど労働者に必要な情報を時間的余裕をおいて十分に提供する必要がある(大阪地判・昭57・三井造船事件)

目的が正しいとしても、それだけでその目的を達成するための手段がすべて正当化されるわけではなく、その手段は秩序を守り個人の自由や権利を侵さないように行わなければならない(最高裁大・25,10,11)ものであり、目的が正しい時でさえ憲法違反にあたるのであれば、その目的遂行の為、控訴人の自宅呼び鈴を鳴らし続けることは憲法第13条の個の権利を侵したものであり、配転命令権の存否を論じる以前に憲法違反である。

(5)乙12 は現在、被控訴人仙台支店に在職していない者を示しただけのものであるから裁判官の判断は認諾できるものではない。被控訴人仙台支店では200名を超える車両管理員が在職しているのであり、現在雇用されている車両管理員の継続雇用の実態を判断せず、退職した一部の者を判断材料にしていることは誤りである。 退職理由の「期間満了」とは、有期雇用契約者が最初の雇用期間満了時に更新せずに退職した者をいう(乙12、4頁、注3)ことからも会社都合と期間満了とは別である。又、定年退職した者は11名中1人との判断は誤りである。定年退職した後に嘱託職員等に身分変更して在職している者は退職者一覧表に記載されず、最後の退職身分で記載されるのであり、№39の控訴人の前任者のように有期雇用契約正職員を定年退職してからも雇用されているのが実情である。(被控訴人証拠説明書2の乙13号証、立証趣旨)
   
労働契約法第19条の要件に該当するか否かは、これまでの裁判例と同様、当該雇用の臨時性・常用性、など個々の事案ごとに判断されるものであり、臨時性・常用性の区別においては他の労働者の勤務実態からも判断されるものであり、乙12 において期間満了の有期雇用契約正職員の実態がなく、退職した同地位の者でも継続性があることからも(№11は10年以上)同法第19条2項の雇用継続の期待権が存するものである。又、初回更新の有無は参考になるといえども同法第19条2項の雇用継続の期待権を覆す判断材料にはならない(大阪高判・竜神タクシー事件・平3,1,16)(福岡地判・福岡大和倉庫事件・平2,12,12)
   
雇用継続の期待は最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案されるものであり、被控訴人が主張する労働審判時において雇用継続の合理的期待は発生していないとの主張は、控訴人の採用時からの雇用継続の期待を覆す理由には該当しない。
   
雇止めには同法第16条の「合理的、社会通念上許されるべく理由」の存在が必要であり、上記のとおり控訴人は採用時から現在まで雇用継続の期待が存するものであり、解雇権濫用法理が類推適用されるべきところ、被控訴人と銀行との間に委託契約が現在も続いている状況、甲15号証による車両管理員を募集していることからも、人員削減の必要性は認められず、雇止め回避の努力も何らなされておらず、事前・事後の協議・説明も不十分であることからこの雇止めは社会通念上相当とされる客観的合理的理由がないものであり、解雇権濫用法理の類推適用により無効である(新潟地判・平22,12,22)

(6)1審裁判官は控訴人に対して具体的説明を求めていながら、被控訴人に対して控訴人の配転や雇止め理由の具体的説明を求めておらず、控訴人が 甲14 において求釈明したにも拘わらず、被控訴人の職員たる同氏の証人申請など被控訴人に立証させないことは「最高裁で確立した解雇権濫用法理とこれに基づく民事裁判実務の通例に則して作成されたものであることを踏まえ、解雇権濫用の評価の前提となる事実のうち圧倒的に多くのものについて使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更ものではない」ことが立法者の意思であることが明らかにされており、これについては法第16条においても同様であること(平24,8,10基発0810第2号)からも失当である。

(7)同様の契約を締結した前任者が更新された場合、雇用継続期待権が発生するのは当然のことである。1審裁判官は業務上の必要性による更新を述べていながら、業務上の必要性の具体的理由を示さず、勤務状況、健康状態の問題による不更新を述べているのみである。控訴人は配転前の銀行では無遅刻、無早退、無欠勤であり、事故も一切なく、勤務状況や健康状態に問題が生じていない。勤務状況や健康状態に問題が生じたのは配転後のことであり、このことをもって不更新理由にした判断は信義則上許されるものではない。期間の定めのある雇用契約であっても、その期間の定めが一応のものであり、当事者間いずれかから格別の意思表示がない限り当然更新されるべきものとの前提の下に存続、維持されてきたものを期間満了によって終了させるためには、雇止めの意思表示及び雇用契約を終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情の存することを要する(最高裁判・62,10,16)

(8)雇止め時である平成27年(28年の誤り)4月30日においての業務の可否を持って雇止め理由にあたるものではない。その後、平成28年5月の診断において通常の労働に差し支えなく、労働習慣にも大きな問題はないとの医師の見解を無視した判断である。労務に適さない場合、配置変更などの処置を講じるのは使用者の責に帰すべきものであり、それを講ぜず解雇した後の賃金請求権を失うものではない。(最高裁判・片山組事件・平10,4,9)
 
1審裁判官は「本件配転後にうつ状態になったことを認められるものの」と判断しながらうつ状態が配転命令に起因するものではないという不思議な判断をしている。「前の職場に対する苛立ちなどがあるようである、というにすぎず、原告のうつ状態が本件配転命令によるものであることを裏付ける証拠はない。」と判断しているが、医師が直接、配転によって、うつ状態になったと記載することは自身が裁判に関与することを避ける為に控えるのは当然のことである。しかも、甲7 は就労可否証明書であり、現在就労が出来るか否かを医師が判断するものであり、配転と病症の因果関係を記載するものではない。しかしながら、控訴人と医師とのカウンセリングの中で、控訴人が、うつ状態になったのは配転によるものと認識しているのは明らかであって、甲7 に示してあるとおり、病症の発生時期は平成27年12月と控訴人が被控訴人による配転を強行された時期であり、それによって就労できなかった時期は配転後であることは明らかである。かつ、うつ状態が業務に起因せず、全くの私傷病であるならば、「前の職場に対する苛立ちなどがある」と記載することはない。

控訴人は配転前にいかなる精神疾患を伴わず、通院、入院は皆無であったことを述べている(控訴人証人尋問)かつ、配転後に被控訴人に対し控訴人が配転後平成28年1月4日から「日本総合サービスにて勤務するが、体調を崩す。運転代務員のしごとは出来ず、結局自主退職を選ばざるを得ない状況である」(甲10・平28,1,13付、民事調停申立てに提出)と配転後の体調悪化と運転代務員の業務に就くことが出来ない旨を述べ、被控訴人はこのことを知りながら、配転見直しを講じることもせず、尚、それによって悪化し休職した事実をもって雇止め理由としたことは信義則を無視したものであり債務不履行である。被控訴人が就業規則による医師の見解を聴取しないことは(被控訴人に対する反対尋問)規則違反のみならず、医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換(以下略)労働安全衛生法第66条5項 違反である。被控訴人はこの債務を履行するどころか「復職のために医師の意見を聴取することには意味がない」(被控訴人準備書面1、18頁)と控訴人の健康管理の責を放棄したものであり、労働契約法第5条違反である。

使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるように必要な配慮をするものとする。(労働契約法第5条)①

使用者が労働者に対し異動を命じる場合にも、使用者において労働者の精神状態や異動のとらえ方から、異動を命じることによって労働者の心身の健康を損なうことが予見できる場合には異動を説得するに際して労働者が異動に対して有する不安や疑問を取り除くように努め、それでもなお労働者が異動を拒絶する態度を示した場合には異動命令を撤回することも考慮すべき義務がある(名古屋地判・ジェイフォン事件・平19,1,24)

使用者は配転命令での労働者の意に反して退職に追い込まれないように職場環境を整備する義務を負う(水戸地判・エフピコ事件・平11,6,15)

使用者は配転命令での労働者が被る経済的、精神的不利益を軽減すべき配慮義務を負う(東京高裁判・帝国臓器事件・平8,5,29)

使用者はその雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負う(最高裁判・平12,3,24)

配転後の健康等の問題により運転業務に適さないと判断し、本件雇止めが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとみとめられないとき」に当たるとはいえないという1審裁判官の判断はこれら法令、判例を無視したものである。

(9)本件雇用契約は平成28年5月1日に更新されるものであり、現在も日本政策投資銀行に被控訴人の車両管理員が常駐していることからも、業務上の必要性は存するものであり、平成28年1月13日に配転命令撤回の民事調停申立て、同年3月23日に配転命令撤回及び雇用継続の労働審判申立て、同年6月6日に地位確認等請求をしていることから控訴人にそれぞれ訴えの利益が存しているものであり、平成29年5月1日に再更新して現在も日本総合サービス株式会社にて勤務している認識であることから(控訴人に対する1審裁判官の尋問)控訴人は被控訴人に対し未払いの賃金請求権を有するものである。

病気療養であっても疾病が快方に向かっており、その旨の医師の診断書を提出し、就労の意思を明確にしている労働者を、会社が休職期間満了を理由にして解雇したことにつき、会社は、病み上りの労働者が労務の提供を完全にできない場合でもその能力、経験、地位に照らして労務の提供を受けることが可能であると認められるので、本件判決確定の日までの月例給与、賞与、の支払い及び慰謝料の支払いをすべきである(大阪地判・平20,1,25)

(10)労働契約法第5条の「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれるものであり、法第5条の「必要な配慮」とは一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではないが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的状況に応じて、必要な配慮が求められるものであることは示されているのであるから、控訴人が 甲10において初期の段階から配転による体調悪化と運転代務員の仕事が出来ない意思表示をし、乙5 において平成28年1月下旬には病気療養の為、有給休暇を取得し、かつ民事調停および被控訴人仙台支店長に対し、配転撤回によって病気を治したいと繰り返し懇願し、尚、配転を見直さず運転代務員の仕事に従事させることによって病症が悪化、乙6 において診断書を提出し休職した事実を鑑みると、1審裁判官の判断は憲法第25条の生存権を無視した判断である。うつ状態になったことを認識しながら医師の聴取もせず、職務内容を見直さず、その症状をもって解雇することにより収入が閉ざされることが、健康で文化的な最低限の生活の営みになるかどうか問うものである。
 
就業規則(乙4)第16条で、6ヵ月間の休職期間を認め、第19条に医師の意見の聴取をもとに配置換えを講じる措置を示しながら、控訴人の2ヵ月の休職に対し、雇止め理由書(甲6)には「2か月余の長期間休業した」と記載し雇止めを恣意的に正当化したことは悪意である。躁うつ病で休業後復職した社員の解雇は、病症に先立ち専門医の助言を得ておらず、適正な治療によって効果を上げる場合もあり、休職期間も十分残されており、解雇権濫用である(東京地判・平17,2,18)

就労可否証明書(甲7)からも平成28年5月下旬には就労できるとの医師の証明があり、被控訴人が医師の聴取をすれば判明できたものでありながら聴取をせず、病症をもって解雇することに正当性は存しない。使用者が病気休業期間満了により復職を申し出た労働者に対し復職を拒否して自然退職扱いにするには、使用者が、治療の程度が不完全なために労務の提供が不完全であり、かつ、その程度が今後の完治の見込みや復職が予定される職場の諸般の事情等を考慮して、解雇を正当しうるほどのものであることまでをも主張立証することを要する(東京地判・59,1,27)

労働者が休業又は休業後直ちに従前の業務に復職できない場合でも、比較的短期間に復帰可能と認められるときには、復帰準備期間の提供や教育的措置をとり、解雇すべきではない(最高裁判・平13,9,25)

控訴人がうつ状態になるための業務上以外の要因について何があるだろうか?配転前の勤務状況や健康状態、鬱症状の時期や背景、甲7、甲10 から読み取れば配転による業務上の疾病であることは明らかである。1審裁判官は控訴人に対して立証責任を課しているのみで、被控訴人に対して、業務起因性を妨げる立証責任を課さないことは公平に値しない。業務上の疾病とは、その内在する危険が現実化したと認められ、もって当該業務と相当因果関係にあるものと解する。うつ病を発病したことについて、業務起因性を認定することを妨げるに足りる要因があったことは認められず解雇は無効(東京高判・平、23,2,23)

(11)1審裁判官の判断は前後関係を把握しないものである。平成27年12月21日に控訴人と被控訴人仙台支店長との面談にて控訴人は配転を拒否し、同支店長から業務命令として「平成27年12月30日まで日本政策投資銀行にて勤務、翌年1月4日から日本総合サービスにて勤務」と命じられた。12月24日に控訴人は被控訴人職員である管野指導員の携帯電話に「この異動は受け入れられず、裁判を起こす」連絡をした。翌日、25日に管野指導員は控訴人に連絡を入れることもせず、突然、銀行を訪ね、業務命令と発し有無を言わさず、控訴人を銀行から退去させようとした。拒否する控訴人に対し控訴人の業務を一方的に同僚であるS氏に変更し、控訴人を退社させた後、斉藤氏に命じて控訴人の机の引き出しから控訴人が管理している車両の鍵や銀行入室かードキーを没収させようとしたが、引き出しに鍵が掛かっており、強制的に没収できないと知るや、被控訴人仙台支店長と共に、控訴人の自宅を夜間突然訪ね、カードキー等の返却を強要し、応じない控訴人の自宅の呼び鈴を絶え間なく約1時間に渡り鳴らし続けるという行為を行った。

配転命令はこうして行われており、被控訴人の行為は①憲法第13条の個の権利の侵害、②民法第1条2項の権利の行使及び義務の履行の信義則違反、③同3項の権利の濫用、④労働契約法第1条の自主的な交渉の下で、契約、変更するという合意の原則違反、⑤同法第3条1項の労使対等の原則違反、⑥同3項の生活の調和配慮違反、⑦同4項の権利及び義務の履行、信義誠実違反、⑧同5項の権利の行使の濫用、など多岐に渡るものである。

控訴人の私的領域に踏み入ってまでも配転を強行することが控訴人の人格的利益を侵害するものではなく不法行為を構成しないとは極めて誤った判断でしかない。控訴人は証人尋問で強くこの事を述べていることを1審裁判官は理解しているものであり、被控訴人に対する控訴人の反対尋問においても、被控訴人仙台支店長が平成27年12月30日まで銀行勤務と命じながら、この日まで勤務する意味合いが無くなったのは、同年同月24日に管野指導員に裁判所に訴える旨の連絡を入れたという不純な動機から配転を強行したのであり、まさしく報復的配転であり不当な動機、目的と言わずして何と答えられるものか。この人格的利益の侵害によって、控訴人のみならず、同居している後期高齢者の母の体調を悪化させた行為を犯罪と言わず、乙8 から認識できるとおり控訴人の精神状態を悪化させた証拠がありながら、配転と控訴人のうつ状態に因果関係は見当たらないという1審裁判官の判断は基本的人権の尊重を無視した偏った判断でしかな